6.1 塾に頼る人は合格率が低い

更新日 2021年5月1日


塾に頼らない人の方が難関大合格率が高い

次コラムで難関大合格者が通っていた塾のデータを紹介しますが、その前に知ってほしいことがあります。

関関同立/上智MARCH/早慶/旧帝一工(東大京大を含む)などの難関大の合格者は誰もが塾にいっているというイメージがありませんか?

たしかに塾にいっている人数は多いです。

ですが『合格率』に関しては話は違います。

以下のグラフは「勉強の中心は塾/学校/独学のどれにすえたか?」という質問の回答別に、合否をまとめたものです。


勉強の中心に『塾』をすえた人よりも、勉強の中心に『学校』や『独学』をすえた人の方が合格率が高いことが分かります。




続いて、勉強の中心に塾をすえたかどうかではなく、塾に通ったかどうかと合否をまとめてみます。



塾に通っていても通っていなくても、合格率はほぼ変わらないことが分かります。

なお、グラフは出しませんが、公立高校と国立私立高校に分けてもほとんど同じ結果です。

※なお、事前アンケートをもとに合格者を優先して回答してもらったため、合格率が実際の倍率とは異なります
※また複数の大学/学部を併願した人は、それぞれの合否に応じて重複カウントしています(アンケート回答者は899人)



これは難関大受験者に限ったことではありません。

以下は都道府県別、中学3年生の『通塾率』と『平均学力』です。


「塾にいけば成績が上がる」のであれば、この近似線は右にいくほど高くなるはずです。

ですが実際はそんなことはありません。

統計的にはほぼ相関がない、つまり塾に通っていたか否かと、学力にはほとんど関係ないといえます。




これらは決して「塾に行かない方がいい」ということではありません。

ただ「塾に通っているんだから、きっと合格できるだろう」と単純に考えるのは危険、ということです。

「とりあえず塾にいこう!」とか「レベルの高い塾に通えば合格できる」など、何も考えずに塾にいくだけだと、最初のグラフの通り、良い結果になりません。

塾は、うまく活用すれば心強い味方になってくれますが、あくまで助けてくれるだけです。

『自分の勉強方法』があってその中で塾を活用するのはいいですが、塾に全てをゆだねるような勉強方法では効率的に成績は伸びません。

塾が悪いのではなく、『塾を勉強の中心にしなければならない状況』が良くない、と認識していてほしいです。


目指すべきは『塾に通わなくてもやっていける状態』であり、それが難しい場合は『仕方がないから一部を塾に頼る』という考え方がいいと思います。

今、中学生か高校1、2年生だとしたら、塾を検討する前に、まずは『勉強方法』を見直してみて、学校/独学を中心にすえた勉強で本当に成績が上がらないかを確認することをオススメします。





「やみくもに塾にいく」がよくない理由

別章で詳しく解説しますが、『勉強方法』の中でも特に重要なものとして以下2つがあります。

インプット(授業)とアウトプット(問題を解く)の時間は、基本は3:7、試験直前は1:9がよい。
<9.3 問題を解きながら覚えると効率が20%アップ>

たくさんの問題をこなすより、間違えた問題を繰り返した方がよい。
<8.1 最重要の勉強法!同じ問題集を繰り返す>


ですが、塾に通うと、この二つの実践が難しくなりませんか?

塾に通うと、インプット(授業)の時間が増えますし、宿題も増えるので同じ問題集を繰り返す時間が確保できなくなるからです。

このバランスを取れない人は、塾に通っても成績が上がらなかったり、下手をすれば成績が落ちる恐れすらあります。


逆に、この2つの重要性が分かっている人は、無理に塾の時間を増やさずに、しっかりアウトプット学習の時間を確保し、苦手な問題を繰り返します。

これが、独学や学校を勉強の中心にすえた人の方が合格率が高い理由です。




ただし、あまり勉強をしなかった人が、塾にいくことで先生や友達の影響で、勉強の習慣がつくことはあります。

それも立派な塾の価値だと思います。

ですから勉強し初めの段階で塾に通うのは悪いことではないと思います。

ですがある程度の成績になってきたら、塾の時間を増やす前に、学校か独学を中心にすえた勉強でやっていけないか考えてみてほしいです。


繰り返しますが、むやみに塾に頼る人の合格率は低いです。




塾に頼らず合格するのは地頭がいい人?

ここまで書いたことに対して「学校や独学中心の勉強で難関大に合格できるのは地頭が良い人だけでは?」という反論があると思います。

正直に申し上げて、今あるデータでその可能性を否定することはできません。


ですが、受験ではゼロからの発想を求められることはほとんどありません。

受験問題の99%は、覚えるべきものをちゃんと覚えれば対応できる問題です。

つまり努力で必ず解けるということです。


逆にどれだけIQが高くても、必ずしも難関大に合格できるわけではないようです。


これらを踏まえても「地頭」や「才能」と言われるものの大半は、勉強方法やちょっとした意識の差で埋まるものだと思っています。

周囲から「天才」と呼ばれる人と話しても、ただ単に覚えが早いのではなく、彼らは『明確に言葉にできる自分の勉強方法』を持っていることが多いです。

彼らの『工夫』を、「地頭」という言葉で片付けるのは少し違うと思います。

なぜなら『工夫』はマネできるからです。


私が教えた受験生でも、ちょっとした勉強方法のコツと意識を伝えただけで、急激に学力を伸ばす方がいました。

ですから、「地頭」や「才能」を議論する前に、少しだけでもいいので『勉強方法』を見直してみてほしい、というのが私の思いです。



本コラムのまとめ

  • やみくもに塾にいけばいいというものではなく、塾に頼るにせよ頼らないにせよ、自分の勉強方法を確立するのが大事。